セミナー詳細

グロービス経営大学院大学 開学記念講演 第二回「変革」の部

【開催日】2006年1月11日(水) 【会場】グロービス東京校/大阪校、名古屋校(同時中継)

グロービスは、2006年4月に経営大学院大学を開学する許可を文部科学省より獲得したことを受け、2005年12月16日と2006年1月11日の2回に分けて開学記念講演を行った。 「変革の部」と題した第2回目の講演には、株式会社ローソン代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)の新浪剛史氏が登壇。三菱商事入社から、米国Harvard Business School留学、ローソン社長就任に至る経歴を振り返り、自らのキャリア設計にかかる信条について熱い口調で語った。

「自分の人生は自分で創る」とMBA留学を決意

ローソン新浪氏pict1新浪氏は慶應義塾大学経済学部卒業後、1981年に三菱商事に入社。その後、1989年に社内留学制度を活用して、米国Harvard Business Schoolに渡った。 留学を決意したのは、「自らの人生は自らが作っていくべきであると考えたため」(新浪氏)。ビジネスパーソンの評価指標には、会社の中でどのようなポジションにいるかという「会社価値」と、どのような知識、度量、経験を持っているかというような「市場価値」が考えられるが、「私は、広い市場に身を置いてスキルやマインド、チャンスを高めたい。個人としての価値を上げていく生き方をしたいと考えた」と、新浪氏はいう。 そのためには、三菱商事という“大きな会社の中”で慢心するのではなく、「いろいろな国の人、或いはいろいろな業種の人の中に自分を投じて、その価値を見極めたい」。この考えを実現する環境として新浪氏が選んだのが、ケーススタディにより多種多様な背景の人々の意見に触れられる、海外のビジネススクールだったのだという。「ビジネススクールのケースメソッドに学ぶメリットの一つは、これまでに自分が在籍した企業や業界の中にこもるのではなく、いろいろな業種でいろいろな経験を積んだ人から学べること。そこにあるのではないでしょうか」と、新浪氏は話している。

実践を通じてMBAを“竹光”から“真剣”に

ローソン新浪氏pict2MBA取得後は、「CEO(最高経営責任者)、COO(最高執行責任者)といった、ジェネラル・マネジャーを目指したいと思っていた」と、新浪氏。その言葉通り、1993年には三菱商事とフランスの大手給食会社によるジョイントベンチャー「ソデックスコーポレーション」を立ち上げ、同社の代表として事業を成功に導く。その後も、外食関係のベンチャー「クリエイト・レストランツ」の育成、日本ケンタッキー・フライド・チキンの再建など、華々しい成果を残してきた。 この過程で役立ったのが、「MBAで学んだ、基本的なフレームワークだった」と、新浪氏は話す。「皆さんも、感じていらっしゃることと思いますが、ビジネスに回答は存在しないんですよね。1足す1が2にはならない。環境変化や人の感情などいろいろな周辺要素に常に左右されています。そうした中で、何が自分達の体力に合っているか、どう動いていけば良いのかを選択しなければならない。その際、やみくもにいろいろなことを考えるのではなく、最低限、どのポイントを押さえておかなければいけないかという枠組み=フレームワークを、ビジネススクールは教えてくれる」(新浪氏)。 このフレームワークをどのように使っていくべきか。幾度とないケーススタディを通じて習得した“思考力”が、新浪氏を支えてきたのだという。 新浪氏はまた、「MBAというのは、取得しても、それを実際に使わない限りは竹光(竹を削って刀身とし、刀のように見せたもの)なんですね。真剣になるか否かは、取得した後、どう生きるかにかかっています」と、MBAで得た知識・思考力は実践を通じて初めて力を持つものだという点についても強調している。

共通言語を持った経営者育成に期待

ローソン新浪氏pict1ローソン社長には、2002年に就任した。最大の競合となるセブンイレブンとのすみ分けを考えるうえで重要視したのが、「企業哲学の大切さ」。これも、MBA留学中に学んだことという。「社長就任後はまず、ローソンをどういう会社にしたいのか、ローソンでは何を社会に対して提供していきたいのかという”ローソンイズム”を作り上げるところから始めました」と、新浪氏は話す。 最近では、人材育成にもMBAのフレームワークを取り入れている。中堅社員を集めた研修に、ケーススタディのメソッドを取り入れ、「新浪剛史だったら、どうするか?」を議論させているのだ。「小売業というのは、現場での仕事が中心になるので、社員は立ち止まってものを考えるということをやってきていないんですね。フレームワークを学んだことのある人というのも1人もいない。そうすると、私が『これからは、こういうふうに進みましょう!』といっても誰も共感もしなければ、共鳴もしないわけです。しかし、事を起こし、アクションに落とし込むときには共鳴がすごく大切です。言われてやるのと、戦略に共鳴しながら動くのとでは生産性が格段に異なりますから」(新浪氏)というのが、その理由だ。 「小売業ほど非生産性極まりのないところはありません。ローソンのReturn on Equity(ROE、株主資本利益率)は、13%。某社は9%、某社は6%。どんどん店舗を建てています。(小売業は押しなべて)株主に対するリターンが極めて少ない。私は15%を目指している、15%はなければならないと思っています。そのために、出してはならない店舗は出さない」と、新浪氏は説明する。だが、「私は”共通言語”を持った人が経営をすることが非常に大切であると思っています。資本主義社会において、業態ごとにゲームのルールが違ってはいけないのです」というのが新浪氏の持論。 だからこそ、「共通言語、同じゲームのルールに則ってやっていかれるリーダーに、どんどん出てきてほしい」「グロービス経営大学院には、そうした人材教育を是非進めてもらいたい」。新浪氏は、そう期待を述べ、講演を結んだ。

 

ゲストスピーカー

新浪剛史氏 〔にいなみ・たけし:株式会社ローソン代表取締役社長兼CEO〕

1981年:慶應義塾大学経済学部卒業
1981年:三菱商事株式会社入社
1991年:米国Harvard大学経営大学院修了(MBA取得)
1995年:株式会社ソデックスコーポーレーション代表取締役(現・ソデッソジャパン株式会社/JASDAQ上場)
1999年:三菱商事株式会社生活産業流通企画部外食事業チームリーダー
2000年:三菱商事株式会社ローソンプロジェクト統括室長兼外食事業室長
2001年:三菱商事株式会社コンシューマー事業本部ローソン事業ユニットマネジャー兼外食事業ユニットマネジャー
2002年:株式会社ローソン顧問 2002年:株式会社ローソン代表取締役社長執行役員
2005年:株式会社ローソン代表取締役社長兼CEO