セミナー詳細

グロービス経営大学院大学開学記念講演 第一回

【開催日】2005年12月16日(金) 【会場】グロービス東京校/(同時中継)大阪校、名古屋校

「創造」の部 三木谷浩史氏〔楽天株式会社代表取締役会長兼社長〕

第一部:基調講演 三木谷浩史氏〔楽天株式会社代表取締役会長兼社長〕

第二部:記念対談 三木谷浩史氏〔楽天株式会社代表取締役会長兼社長〕堀 義人〔グロービス経営大学院 学長〕

第二部:記念対談 三木谷浩史氏〔楽天株式会社代表取締役会長兼社長〕 堀義人〔グロービス経営大学院学長〕

楽天三木谷pict7堀:こういう場面でご一緒させていただく機会というのは、これまで実はほとんどありませんでしたね。非常の良い機会なので、本日は色々とご質問させていただければと思います。まず、そもそも論となるのですが、三木谷さんはなぜMBAを取ろうと考えられたのですか。
三木谷氏:先ほどにもお話ししたように、ベンチャー企業を興そうとか、そういうつもりでは全くありませんでした。当時は“世界を股にかけるビジネスマン”になろうと考えていて、「まぁ、どうせ行くならHarvardかな」と。当時は、 HarvardであればGMATを受験する必要がなかったというのも選択理由の一つでしたね(笑)。

堀:三木谷さんはお父様が経済学者でいらっしゃるんですよね。
三木谷氏:ええ。HarvardやYale、Stanfordでも教鞭を取っていました。
堀:Harvardの教授も、もともとよく知っていらした?
三木谷氏:そうですね。だから入学できたのかも(笑)。
堀:お兄様も研究者なんですよね。
三木谷氏:はい。現在はバイオ関連技術の研究をしています。

堀:
ご経歴を拝見して面白いなと思ったのですが、私も全く同じような境遇なんです。父も兄も教授で、私は起業家になった。どこか共通項があるのかな…と。
三木谷氏:堀さんは(経営大学院大学の)学長になられたんだから、いいじゃないですか(笑)。

堀:Harvard Business School(以下、HBS)で印象に残っているクラスはありますか。先ほど、フレームワークが大切だ、というようなお話が出ましたが…。
三木谷氏:社長業というのは、「ファイナンス」「アカウンティング」「マーケティング」「オペレーション」など、経営に係るあらゆる知識、背景を必要とされるので、どれか一つに特定するのは難しいですね。成長スピードの速い企業では、それだけ様々な問題が起こりますし、そのたびに広範な知識を要求される。そうした中で、「問題に直面したときには、どう考えればいいか、何を考えればいいか」というような枠組みを自分の中に持てたことが最大の“学び”かもしれません。
堀:先ほどのお話の中に顧客満足の最大化やスピードアップを行動規範として掲げられているという内容がありましたよね。それをお聞きしながら、「サービスマネジメント」や「組織行動学」などのクラスから得られたものも多かったのかな、などと想像していました。私自身、グロービスのビジネススクールではクラス受講者に対し、内容に不満があれば受講料を返却するというシステムを導入しているんです。今回の経営大学院大学でも、2年間、受講して本当に満足できなければ受講料はお返しすることにしています。
三木谷氏:そうですね。確かに教材など何度も読み返しているものはあります。
堀:ただ私は、HBSに留学する前は実はMBAには懐疑的だったんですよ。というか、当時はバブルのさなかでしたから、海外から学べるものなどないとまで思っていた。でも実際に留学してみると、「こんなに学ぶべきことがあったか」というような衝撃がありました。三木谷さんは「MBAを取得したから楽天をこれだけ急成長させられた」というような感触はお持ちですか?
三木谷氏:MBAを取っていなかったらどうなっていたかは分かりませんので、比較は難しいですね。ただ、楽天の成功要因の一つとして、他の人が「どうやったらインターネットでモノが売れるか」を考えたのに対し、私は「何で人はモノを買うか」という分析から入ったんです。つまり「消費行動学」の考え方ですよね。インターネット上で商品を顧客自身に評価させる仕組みにしても、かなり基礎的なマーケティングの考え方をネット市場向けに置き換えたものですし。

堀:もう1つ、先ほどのお話で印象的だったのが「ビジネスの大きな決断は、最後は直感で行っている」というものでした。三木谷さんにとって、“直感”とはどういうものなのでしょうか。
三木谷氏:そうですね。昔、テレビを見ていたら棋士の羽生善治さんの頭にある機械を装着して、右脳と左脳のどちらが活発に働いているかを見る、という実験をやっていたんですよ。
堀:あ、それ、私も見ました。

楽天三木谷pict8三木谷氏:小学生の棋士が左脳を使っているのに対して、羽生さんは右脳なんですよね。つまり、ほとんどロジックでは考えていない。言語的に云々ではなく、幾何学的に判断しているんです。私はビジネスモデルを考えるとき、図を描いてみてそれがきれいなチェーンを作ったりすると「これはイケる!」などと思うのですが、それと非常に似ているのかな、と。図を描いて、後からロジックを考えると大抵、うまい具合に説明がつくんですよ。
堀:そうした直感力を育てるうまい方法というのはあると思いますか。
三木谷氏:どうでしょう。ただ、羽生棋士も最初は左脳で考えていたのだと思うんですよ。それが、経験が蓄積し、先ほどお話ししたような「右脳と左脳のキャッチボール」を繰り返すうちに、自然に右脳だけで幾何学的に判断できるようになった。

堀:そういえば、羽生棋士は駒の進み方を見て、「絵的にきれい」という表現をされることがありますね。三木谷さんは、そうした「絵」、つまりビジネスモデルはどんなときに思いつきますか。
三木谷氏:常に考えている、というより、寝ている時などに、ふと思いつくんですよね。もちろん検証してみると間違っていた、というものもあります。考えの基となっているのは、「何に価値があるか」ということだと思います。例えば楽天市場立ち上げ当初は、パソコンの初心者や中小規模の企業でも簡単に出店できるような仕組みに価値があると考えましたし、今は顧客データベースの拡充と活用。事業の拡大に併せて、考えること、思いつくことはどんどん変化してきています。

堀:創業されてから一番、苦しかったのはどんなことでしょう。

楽天三木谷pict9三木谷氏:どうも鈍感みたいで、事業に関しては苦しいとか辛いとかいうことは感じないんですよ。というより、起業家というのは苦難を楽しむようにできているのではないのでしょうか。マゾみたいで嫌なんだけれど(笑)、目の前の壁が大きなものであればあるほど、「ようやく俺の出番が来た」と、熱くなってしまうような…。例えば山登りなどでも急勾配ほど燃えてしまうんです。堀さんも同じではないですか。
堀:確かにそうですね。ところで先日、とある調査を実施したところ、そこで三木谷さんの知名度は80%、私は25%と出たんです。ちなみにサイバーエージェントの藤田晋さんが50%で、私もグロービスのためには野球とか芸能人と結婚とかしなくちゃダメかな、なんて思ってしまったのですが(笑)、三木谷さんはご自身の知名度が上がっていくことへの不快感のようなものはありますか。
三木谷氏:それは正直に言えばいいことではないですね。心地よくはない。でも、仕方ないのかな。
堀:一世代前の起業家は、企業の知名度が高まることはあっても、起業家自身の知名度が上がっていくということはなかったと思います。それが今では、起業家の知名度がトラフィックを生み、企業価値や売り上げの向上につながる。
三木谷氏:おかげで人生が不便になりました(笑)。野球をやれば、それが宣伝効果になって、自分が露出する機会は減るかと期待していたのですが、野球をやったらかえって顔が出ちゃったし。

堀:好きな歴史上の人物や言葉はありますか。
三木谷氏:楽天市場は織田信長の楽市楽座から取りました。ただ、特別に好きな人というのはいないですね。自分の独自性を大切にしたいですし。強いて挙げるとすれば松下幸之助さんでしょうか。言葉は、先ほども少し出ましたが「大義名分」「品性高潔」「用意周到」「信念不抜」というのを会社資料などにも挙げています。あと「一致団結」。そういう志のある会社にしたいと思っています。

堀:会社資料の中に、「最も必要なものは人材」とありますね。三木谷さんが求めるのは、どんな人材ですか。
三木谷氏:常に自走する人ですね。与えられたものを解決するだけではなく、自ら課題を見つけ、それを解決していく人。
堀:ありがとうございました。